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虐待と事故を明確に判別するための専門分野の確立を目指す調査

投稿者:武井 昭紘

臨床現場で多くのペットおよびオーナー(飼い主)に接していると、過度な削痩、ブラッシング不足による全身の毛玉、巻き爪(爪の過長)、不自然に見える創傷、ケガをしやすい個体(繰り返しキズを負う)などネグレクト(飼育放棄)や虐待を疑う事例に遭遇することがある。しかし、適切な飼育方法を知らないだけで故意が無い場合(ただし、動物愛護法ではペットオーナーは正しい知識を持つことが必要とされている)もあり、動物愛護法に違反している行為に該当するか判断に苦慮することが多いかと思う。そのため、客観的で明確な判断基準が必要であり、ヒトの法医学に相当する専門分野を獣医療においても確立することが非常に重要であると考えられる。

そこで、アメリカのタフツ大学獣医学科は、自動車事故に遭った症例と虐待を受けていた事例における創傷(ケガ)を比較することで、キズを観察することで虐待の事実の有無が判別できる判断基準を決定する調査を行った。この研究には、アメリカ動物虐待防止協会も参加しており、50件の虐待(刑事事件として立件されたもの)のデータが提供されている。また、自動車事故の症例としては、同大学の動物病院に来院した426件を対象とした。調査の結果、虐待における創傷では頭部外傷、歯や肋骨の骨折、爪部の損傷が目立つのに対して、事故では皮膚の裂傷、肺挫傷、後肢のケガ(迫ってくる自動車から逃げるために背を向けるから)が多くのケースで認められることが明らかとなった。

今後、同様の調査・研究が世界各地で実施されることで、ネグレクトや虐待の有無を判定する「獣医法医学」が発展していくことに期待したい。

明確な判断基準が存在することで、救われるペットが増えると同時に、獣医師が判断に悩むことが少なくなると思います。

明確な判断基準が存在することで、救われるペットが増えると同時に、獣医師が判断に悩むことが少なくなると思います。

 

参考ページ:

https://www.vettimes.co.uk/news/research-could-help-vets-tell-animal-abuse-from-accidents/


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