ニュース

犬の「てんかん」を食べ物で治す新しい治療法

投稿者:武井 昭紘

犬の「てんかん」は、MRI検査などで脳に器質的異常を認めない状態で、発作(神経症状)を呈する疾患である。この疾患では、発作の間隔が短くなると病態が悪化するため、フェノバルビタールやゾニサミドなどの治療薬で発作が起きないようにすることが重要である。しかし、一部の症例では、薬剤による発作の抑制が上手くいかない場合があり、てんかん以外の疾患の探索や新たな薬剤の開発、薬剤以外での治療方法の確立の必要性を感じることがある。そこで、今回は、王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)が研究を進めている「薬剤以外での治療方法」の可能性について記載したいと思う。

同大学は、初めに、ブリーダーおよび「てんかん」を抱える犬のペットオーナーに協力を得て、飼育されている犬の食生活に関する調査を行った。そして、調査データを基にして、中鎖トリグリセリド(medium-chain triglycerides、MCT)の摂取と「てんかん」の症状の発現に注目して、更なる研究を進めることにした。研究では、特発性てんかんの犬が用いられ、無作為にコントロール(プラセボ)群とMCT oil投与(投与期間は6ヶ月)群の2つのグループに分けられ、二重盲検試験(ダブルブラインド)にて「てんかん」の症状(発作)の有無・頻度に関して評価が実施された。

研究の結果、プラセボ群に比較して、MCT oil投与群の74%の犬で発作の頻度が減少していることが明らかとなった。また、減少の割合が計算してみると、MCT oil投与群の約半数の犬(48%)で50%まで発作の頻度が低下し、14%の犬に至っては発作が認められなくなっていた(発作の頻度が100%減少したということである)。

参考ページには、MCT oilの詳細な作用機序に関して記載がないため、今後の研究課題であると考えられる。今後、研究が進み、「てんかん」に対するMCT oilの有効性が多くの論文で報告されるようになれば、「てんかん」の新たな治療法が確立され、MCTを豊富に含んだ「てんかん」専用の療法食やサプリメントの開発が行われるかも知れない。

薬剤に頼らない治療法が確立されれば、副作用や肝・腎などの臓器への負担を心配する必要がなくなるかも知れません。

薬剤に頼らない治療法が確立されれば、副作用や肝・腎などの臓器への負担を心配する必要がなくなるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.vettimes.co.uk/news/study-gives-new-hope-to-epilepsy-dogs-says-prof/


コメントする