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熊本地震でペット同伴避難所を提供した獣医師 まだまだ過渡期

投稿者:AsaT

「人命最優先」で軽視されがちなペットの命。7月28日の熊本地震で、発生直後に「ペット同伴避難所」を開設し、多くの飼い主と犬猫を受け入れた獣医師がいる。熊本市中央区にある「竜之介動物病院」の院長で、九州動物学院の理事長も務める德田竜之介氏だ。

記事によると、竜之介動物病院は、動物看護師を養成する「九州動物学院」を併設した九州最大規模の動物病院。協定を結ぶ熊本市の要請を受け、8月2日まで学院のある3、4階の2フロアをそれぞれ犬用、猫用に分け、避難スペースとして開放していた。地震発生翌日の時点で、約30組の飼い主と48頭のペットが個室テントなどで共に寝起きし、学院で動物看護師をめざす学生がボランティアとして活動したという。

震災時、ペットと共に避難をする「同行避難」は、各地の自治体で推奨されている。だが一般的な避難所では、人間が避難生活を送るスペースに、犬猫を連れ込むことまでは許されておらず、別室の専用区画や、時に屋外で過ごすことも。人とペットが同じ空間で過ごせる「同伴避難」とは異なるのだ。

「2016年の熊本地震から10年が経ちますが、この10年、熊本県は地震だけじゃなく台風や洪水など、とにかく災害だらけ。その度にうちでペット同伴避難所を開設しているので、住民の皆さんも行動がすごくスムーズになってきました。今回も、地震発生直後から被災者が身を寄せ、問い合わせの電話が何百件もきました。熊本は、ほかの県に比べて圧倒的に防災意識が高いと思いますが、県内でペット同伴避難を実施しているのは、うちともう1軒くらい。まだまだ過渡期です」

竜之介動物病院では、2016年の熊本地震の際にも病院内に避難所を開設し、延べ1,000人以上の被災者と3,000頭以上のペットを受け入れた。10年前に比べると今回の避難者数は大幅に少ない印象だが、今回は被害の中心が病院のある熊本市中央区から離れており、親戚宅や宿泊施設などへ分散して避難する飼い主が増えたことも影響したとみられる。

東日本大震災で見た悲惨な現場
人とペットが同じ空間で過ごせる避難所の必要性を德田院長が痛感したのは、15年前に視察した東日本大震災の被災現場だった。

「当時は、『まず人が避難して、ペットは後から迎えに行く』という時代でした。でも現地に入ると、繋がれたまま犬が溺死していたり、原発事故の警戒区域に取り残されて餓死していたり……本当に凄惨でした。『これはもう、ペット同伴の避難所じゃないとダメだ』と感じました」  2016年の熊本地震のころには、ペットを連れて逃げる「同行避難」の考え方は広まり始めていたが、避難先で飼い主とペットが別々に過ごさなければならない問題は残った。

「ペットを連れた避難者は周囲に気を遣い、避難所に居づらさを感じて避難所を出てしまう。それで、猛暑のなかで車中泊を続けたり、倒壊の危険が残る自宅に戻ったりする。それが二次被害につながりかねないのです」  つまりペットの命を守ることが人の命を守ることにもつながるのだ。

なぜ日本では「同伴避難」が進まないのか
今回、德田院長のもとには、英字新聞「ジャパンタイムズ」や台湾のメディアが取材に訪れた。実は海外では、人とペットが同じ場所に身を寄せての避難は珍しくない。德田院長によれば、海外向けメディアは、日本の現状に驚いていたという。日本で同伴避難が進まない背景には、トラブルやクレームを恐れる行政と、社会全体のペット飼育率の低さがあると德田院長は指摘する。

「米国では約7割、欧州でも約半数の家庭がペットを飼っているという調査結果がありますが、日本では犬や猫を飼っている家庭は全体の2割程度と少ない。そのためか、ペットの受け入れに抵抗を感じる人の声が優先されがちです。配られたミネラルウォーターを犬に飲ませただけで『人間が飲む水なのに』と怒られることもあるくらいです」

ペットを守ることは、結果として人を守る
また、受け入れる側だけでなく、飼い主にも十分な情報が届いていないのが現状だ。アイペット損害保険が2026年に犬・猫の飼い主を対象に行った調査では、最寄りの避難所のペット受け入れ体制を「知らない」と答えた人が88.4%に上った。  こうした現状を変えるため、德田院長は行政や社会の意識改革を強く訴える。

「『犬や猫を助ける』という視点で考えがちですが、そうではない。ペットは飼い主の生きがいであり命の支え。たとえば高齢者を助けたいのであれば、その生きがいであるペットも一緒に助けなければ、おじいちゃんやおばあちゃんも生きていけない。“人を助けるためにペットも守る”という意識を持ってほしいですね」

避難所の駐車場に犬をつなぎ、そのそばで過ごす被災者の表情は暗く、思い詰めていることが多いという。一方で、竜之介動物病院でペットと一緒に過ごしている被災者は、動物をきっかけにして隣の人と会話が生まれ、自然と助け合うコミュニティができていく。 「家族であり守るべき存在であるペットを抱えている人の方が、むしろ災害や困難を乗り越える力が強いと感じますね」

ストレスで体調を崩すペットたち…飼い主に必要な備え
今回の地震でも、直後にパニックから過呼吸になるペットがいたほか、猛暑による熱中症で命を落としたペットは德田院長の患者だけでも3頭。関連死をふくめると40頭にのぼるという。現在も余震が続く恐怖から食欲を無くし、嘔吐や下痢といった消化器症状を起こす犬猫は少なくない。

「人間以上に、動物は余震の恐怖や環境の変化に敏感です。精神的なストレスから体調を崩す子が本当に多いのが現実です」

では、私たちは日頃からどのような備えをしておくべきなのだろうか。まずは、ペットの預け先や同伴避難できる避難所を把握しておくことだ。「自治体に確認しておくのもいいですが、地域の動物病院が一番確実な情報の窓口になります。

かかりつけの病院が災害時にどう動くのか、平時から確認しておくと安心ですね」  飼い主自身の防災意識を高める工夫も欠かせない。避難所でのトラブルを防ぐためのしつけやケージ慣らしはもちろん、迷子札やマイクロチップの装着、ワクチンの接種や寄生虫駆除、ペットフードやトイレシートなどを入れた非常用持ち出し袋の準備も必須だ。

「ペットを飼うことで、家族の防災意識も高まるし、日頃のコミュニケーションや観察力、思いやりの心も育まれる。ペットがいるからこそ、人間は災害を乗り越えられるんです」


熊本地震でペット同伴避難所を提供した獣医師 まだまだ過渡期(写真と記事は関係ありません)

https://www.dailyshincho.jp/article/2026/08210505/?all=1&page=3

<2026/08/21 デイリー新潮>

 


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