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ペットの輸血用血液 ドナー探しに苦労

投稿者:AsaT

ペットの犬の病気やけがの治療に使う輸血用血液が足りない-。そんな悩みを各地の動物病院が抱えていることをご存じでしょうか。人への輸血を支える赤十字のような仕組みがない中、獣医師らは手術などのたびにドナー探しに苦労しています。

飼い主にとって家族同然の愛犬の命に関わる問題ですが、なぜ血液の安定供給が実現しないのでしょうか。記事では、動物医療の現場を取材が紹介されています。

都内の住宅事情も一因に
「慢性的に血液が足りていません」。そう話すのは、犬のドナー探しに苦慮する獣医の杉本祐一さん。東京都内で営む動物病院で、月400~500匹の動物を診察しており、そのうち犬が7割を占める。

輸血が必要になるのは、貧血の犬を治療したり、大量出血が見込まれる手術をしたりする場面。毎年4、5件ほどあり、いずれも今日、明日に輸血できないと生死に関わる症例ばかり。「よく遭遇するのは、お腹の中にできた腫瘍がはじけて体内で出血しているケース。飼い主さんが『なんか元気ないんです』と連れてきたペットの犬がすでに重度の貧血状態で、緊急で輸血が必要になります」。こうした場合、小型犬でも最低200ミリリットルは輸血しなければならないことが多いという。

「来院した時点でいつ死んでもおかしくない状況ばかりで、その上、輸血用血液が見つからないと、飼い主も非常に不安になる」と杉本さん。輸血のたびに過去の診察記録からドナーを探し、その飼い主に献血への協力を求めている。

依頼できるのは1~7歳の健康な犬。「採血量は体重1キロ当たり20ミリリットルが最大なので、例えば200ミリリットル必要な場合は余裕を持って15キロ以上の犬が望ましい」といい、ラブラドルレトリバーなどの大型犬が対象になる。このほか、犬の血液型や過去の輸血歴なども考慮しなければならない。

ただ、こうした条件が重なると、献血可能な犬は3~5匹ほどに絞られる。当然、急な依頼のため飼い主から断られることもあり、必ず確保できるとは限らない。杉本さんは、マンション住まいの飼い主が多い都心には大型犬が少ないこともドナー不足の一因とみる。

こうした事情から、杉本さんは飼い主にもドナー探しを依頼することがあるという。実際、飼い主がSNSを通じてドナーを見つけるケースも多いが、同時にリスクも感じている。普段から診ている犬なら病歴や体の特徴などを把握しており、採血後に体調を崩しても主治医として対応できる。一方、SNSで見つけたドナーは初対面で、遠方から来る場合もあり、採血後のケアが十分にできず、獣医として責任を負いきれないことが気がかりだという。

ドナーを探すのが簡単ではない状況を踏まえ、献血できる大型の「供血犬」を飼育している動物病院もある。杉本さんも過去に検討したが、大型犬を飼育するスペースや世話の負担がネックになり断念。「輸血の適齢期が限られており、常に若い大型犬を飼い続けるのは難しい」と話す。

ほかには、あらかじめ採血した血液を成分ごとに分離し、血液製剤として保存する手もある。しかし、高額な医療機器が必要な上、貧血治療などに欠かせない赤血球は長期保存に向いていない。根本的な課題解決には至らないと、こちらも見送った。

かつて来院した飼い主から「なぜドナーが見つからないのか」と詰め寄られた経験がある杉本さん。「なんとか病院側が安定して血液を確保できたら良いのですが」と声を落とした。

輸血の需要増、意識の変化も一因
ドナー確保に苦労する獣医は杉本さんだけではない。獣医らでつくる日本獣医輸血研究会の内田恵子会長は、病院の規模などによって献血の充足度は異なるとしつつも、業界全体として「どこも(輸血用の血液は)潤沢ではありません」と指摘する。  供血犬がいる病院でも、飼育できる頭数には限りがあるため不足分は献血頼みで、「どの病院も一生懸命、ドナーの必要性を説明して募集しています」

ただ、そうした現場の実情とは裏腹に、輸血の需要は増加傾向にある。背景には、ペットの高齢化に伴い心臓手術が増えているほか、飼い主側の意識の変化がある。「昔は諦めてしまったケースでも、『ペットも家族の一員』という意識の高まりから、なんとか手を尽くしたいと考える人が増えています」

安定供給を阻むのは・・・
個々の病院の努力だけでは難しいにもかかわらず、なぜ血液を安定供給する仕組みがないのか。内田会長が指摘するのは、法律の壁だ。

医薬品医療機器法(薬機法)上、病院で採血した犬の血液は「医薬品」に該当する。自分の病院内で治療のために使用することは認められている一方、有効性や感染症の懸念といった安全上の理由から病院間での売買や移動が規制されている。そのため、ある病院に保存している血液があっても、必要としているほかの病院に融通できないなど、病院間で連携することが難しい。

安全基準をクリアした製造施設の整備など国からの承認を受ければ、血液を医薬品として流通させられるが、今度は採算の問題がある。「赤十字のように全国の病院に配送することなども考えると、採算が合わない。製薬会社などがやろうにも、事業として成立せず、実現していません」

犬が家族の一員になるために
犬の輸血を巡る需要と供給のミスマッチ。そうした状況の改善が期待される取り組みも始まっている。再生医療の活用は、その一つだ。健康な犬の脂肪から血小板を作る研究が進んでおり、内田会長は「そうした仕組みを応用できないか、模索しています」

とはいえ根本的な課題解決には、法規制の緩和が避けられない。研究会では、輸血を安全に扱うための知識やスキルを備えた人材の育成など輸血医療の普及に向けた下地づくりに取り組むほか、国への働き掛けもしていく考えだ。

「少なくとも地域内の動物病院間で血液を移動できるよう、国には認めてほしい」と話す内田会長。「ペットを家族の一員と考える飼い主にとって、愛犬の治療ができなければ、心に深い傷を負うことになる。ペットを守れなければ、人の健康も守れなくなることを国には気付いてほしい」と語った。

 「慢性的に血液が足りていません」。そう話すのは、犬のドナー探しに苦慮する獣医の杉本祐一さん。東京都内で営む動物病院で、月400~500匹の動物を診察しており、そのうち犬が7割を占める。


https://www.jiji.com/jc/v8?id=202607inuyuketsu-team

<2026/07/01 JIJI.COM>

ペットの輸血用血液 ドナー探しに苦労 (写真と記事は関係ありません)

 

 

 

 


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