ラブラドールレトリバー、ボクサーにフレンチブルドッグ。これらの犬種は、アトピー性皮膚炎の「素因」を持っていると言われている。つまり、他の犬種よりも当該疾患を発症しやすいのだ。この事実を率直に捉えると、他犬種には無く、ラブラドールレトリバー、ボクサー、フレンチブルドッグにはある「遺伝子の問題」が背景にあると仮定することができる。では実際のところ、その問題とは何であろうか。それを明らかにすることは、犬のアトピー性皮膚炎を深く理解するキッカケになると思われる。
冒頭のような背景の中、Mars Petcare社らは、28000匹を超える犬を対象にして、彼らの遺伝子を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆特定の犬種が有するアトピー性皮膚炎の素因と遺伝子◆
・第38染色体においてアトピー性皮膚炎と関連していると想定される遺伝子の変異を発見した
・それはSLAMF1(signaling lymphocytic activation molecule 1 (SLAMF1)に纏わるものであった
・SLAMF1という遺伝子を転写しRNAを発現する時(スプライシングの時)に変異が生じていた
・この現象の程度は特にフレンチブルドッグで強いようであった
上記のことから、SLAMF1の変異は、犬のアトピー性皮膚炎の発症に関与していると考えられる。よって、今後、SLAMF1の変異を意識した繁殖計画の見直し、SLAMF1をターゲットとした治療法の開発が進み、当該疾患に関する診療・管理レベルが向上することを期待している。

人医療において、SLAMF1は麻疹ウイルスが体内に侵入することに関与していると言われております。また、侵入した結果、免疫機能を調整しアトピー性皮膚炎の発症を抑えるとされております。そのためか、麻疹ウイルスと同じくモルビリウイルスに属するジステンパーウイルスに対するワクチンを接種した犬では、アトピー性皮膚炎の発症リスクが軽減されることが確認されております。裏を返すと、SLAMF1に変異を生じる犬にはジステンパーウイルスが侵入しにくい一方で、アトピー性皮膚炎の発症リスクが高くなると想定されます。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2025.1550617/full


