不妊手術から3週間が経って消化器症状を呈したブリティッシュショートヘア(1歳齢)が、中国の動物病院を訪れた。何でも、糞便が細く、排便困難に陥っているとのことだった。画像診断(X線、造影、内視鏡、CT)と血液検査を総合すると、結腸の狭窄が消化器症状に繋がっていると判断された。しかし、何故結腸が狭窄したのかについては原因不明と言わざるを得なかった。果たして、彼女の身に何が起こったのだろうか。
仮に、不妊手術で非吸収糸が使われ、それが腹腔内に残っていたとしたら、肉芽腫ないしは膿瘍が形成されて消化管が圧迫される。だが、本症例の病態は肉芽腫や膿瘍で説明できないようであった。原因追究のために、開腹手術が行われる。すると、結腸に起きた異変が見付かった。結腸を取り囲み、内腔を狭めるようにリング状の組織が存在していた。この組織を切除して閉腹した。臨床症状は急速に改善した。
リング状の組織とは一体何なのか。それを考える上で重要になるポイントは、不妊手術の術式にあった。本症例に適応された術式は、白線を切開して卵巣子宮全摘出術を実施する一般的なものではなかった。腹部の側面から卵巣・子宮にアプローチする方式だったのだ。想像をして頂きたい。右であれ左であれ腹部の側面を切開した場合、①一方の卵巣・子宮体は創部から近い位置にある。しかし、②反対側(他方)は遠い位置にある。当然のことながら、①よりも②は長距離を牽引されることになる。無論、円靭帯も子宮広間膜も大きく移動するだろう。言い換えると、結腸を越えて移動するであろう。そして、術後、②の円靭帯や子宮広間膜が元の位置まで戻らなかったとすると、結腸を取り囲む組織として残る。結果、結腸は圧迫される(狭窄する)。
症例を発表した中国の大学および動物病院らは、この説はあくまでも推論だと述べる。結腸狭窄の原因(リング状の組織が発生した原因)を断定できた訳ではないと。それでも、腹部の側面から卵巣・子宮にアプローチする術式の後に結腸の狭窄が起きたことは事実である。万が一、類似した病態の猫に遭遇した際は、本症例を思い出して頂けると幸いである。

リング状の組織の画像につきましては、リンク先の論文をご参照下さい。
参考ページ:
https://bmcvetres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12917-024-04328-w


