猫の伝染性腹膜炎(infectious peritonitis virus、FIP)は、致死的経過を辿る感染症として知られている。そのため、この致死的な側面を解消する「有効な」治療法の開発が望まれているのだ。そして、近年、同感染症に新型コロナウイルス感染症の治療薬であるレムデシビルが有効だとする研究が報告されている。そこで、疑問が浮かぶ。他の新型コロナウイルス感染症の治療薬は、FIPに有効なのだろうか。
冒頭のような背景の中、オーストラリアの大学および動物病院らは、FIPと診断された、または、その疑いがある猫を対象にして、モルヌピラビルの効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、猫を①モルヌピラビル投与群と②レムデシビル(またはGS-441524)投与群の2つに分け、彼らの経過を追跡している。また、FIPの治療が成功した(寛解した)と判断される事項は、血清中グロブリン濃度およびA/G比(0.6以上)の正常化、または、治療薬の投与を中止してから100日間以上に渡って症状がぶり返さない状態と定義している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆伝染性腹膜炎の猫に対するモルヌピラビルの効果◆
・①のうちモルヌピラビルの投与による治療に臨んだ症例の72%で寛解した
・①のうちモルヌピラビルの投与で寛解の維持を試みた症例の86%で成功した
・①のうち再発した症例にモルヌピラビルを投与して100%の寛解率を実現した
・②では71%が寛解した
・①と②の転帰に差は認められなかった
・①では好中球減少症と肝酵素の上昇(一過性)という副作用が確認された
上記のことから、モルヌピラビルはFIPに有効だと言える。よって、今後、モルヌピラビルによるFIP治療について体系化され、同感染症の診療レベルが向上することを期待している。

モルヌピラビルの用量は中央値で13.3mg/kg BIDでした。また、投与期間は中央値で84日間でした。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40234239/


