鳴く、体を捩る、オーナーにしがみ付く。一般的な体温計で直腸温を測定されている猫では、様々な回避行動が見られる。おそらく、それらは大なり小なりストレスを感じている証拠であろう。つまり、体温測定は猫の福祉を損なう可能性のある診療行為だと言える。しかし、体温は重要な臨床検査所見である。どうすれば、ストレスなく迅速に、且つ、正確にデータを得ることができるだろうか。
冒頭のような背景の中、スペインの大学および医薬品メーカーらは120匹の猫を対象にして、2つの体温測定法で表示される数値を比較する研究を行った。なお、その測定法とは直腸温(rectal temperature、RT)と、マイクロチップ型の体温計で測る皮下温度(subcutaneous temperature、MT)である。また、研究対象となった猫は①臨床上健康なグループ(58匹)、②入院中のグループ(26匹)、③鎮静や麻酔が掛かったグループ(36匹)の3つに分けられている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆猫の皮下に埋め込むマイクチップ型の体温計の精度◆
・RTとMTの数値には強い正の相関関係があった
・一般的にRTよりもMTの方が低い値であった(平均で-0.1℃)
・①のRTとMTの数値の差が-0.71~0.53℃であれば誤差範囲と判断できる
・②のRTとMTの数値の差が-0.51~0.34℃であれば誤差範囲と判断できる
・③のRTとMTの数値の差が-0.60~0.42℃であれば誤差範囲と判断できる
上記のことから、マイクロチップ型の体温計を皮下注射する時のストレスや痛みを除けば、MTはRTの代替になり得ることが窺える。よって、今後、母集団を大規模にして同様の研究が行われ、MTの有用性が検証されていくことを期待している。また、個体識別用のマイクロチップに体温計機能を付随させる製品開発が進み、猫のストレスや痛みが一度きりで済むようになることを願っている。

外来に訪れた猫の体温測定は、来院時間から少なくとも5分経過してから実施されております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38260203/


