慢性腎臓病に起因する高リン血症は、カルシウムの代謝に影響を与え、二次的に副甲状腺機能亢進症を惹起する。そのため、症例の血液中には副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)が増加するのだ。結果、骨からのCaの放出が起こり、病的骨折のリスクとなるのである。一方、話は変わるが、栄養性の副甲状腺機能亢進症では、ビタミンDの不足に伴ってカルシウムの代謝に異常をきたし、副甲状腺ホルモンが過剰にされる。そこで、シンプルに考察をしてみる。栄養性副甲状腺機能亢進症のメカニズムを念頭に置くと、ビタミンDの不足が甲状腺ホルモンの過剰に繋がっている。故に、ビタミンDの補給という治療で、その過剰なホルモンの放出を抑えることが試みられるのだ。そうであるならば、腎性の副甲状腺機能亢進症においても、ビタミンDの補給でPTHが減少すると思われる。つまり、慢性腎臓病の病態を改善すると想定できるのではないだろうか。
冒頭のような背景の中、ヘブライ大学は、慢性腎臓病と診断された犬13匹にパリカルシトール(ビタミンD製剤)を投与して、彼らの臨床検査データを追跡する研究を行った。なお、同研究では、14ng/kg/日でパリカルシトール が投与されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆慢性腎臓病の犬に対するビタミンD製剤の効果◆
・①投与群の3週間ごとの再診でPTHは22%(7~35%)ずつ減少していった
・②コントロール群ではPTHが18%(2~37%)ずつ増加していった
・①では12週目にFGF-23(リンの排出に関与する)が増加した
・②ではFGF-23に変化は見られなかった
・①では12週目までにUPCに変化は見られなかった
・②では12週目にUPCが増加した
上記のことから、慢性腎臓病の犬にパリカルシトールを投与すると、リンの代謝が改善し、タンパク尿は改善はしないまでも安定することが窺える。よって、今後、パリカルシトールに関する大規模臨床試験が進むとともに、慢性腎臓病(副甲状腺機能亢進症を伴わない)に対する同薬剤の使用の是非について議論され、犬の泌尿器科診療が発展することを期待している。

①の半数以上に軽度の高Ca血症がみられたとのことで、克服すべき課題になるかも知れません。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40110605/


