7歳齢の猫(不妊メス)が、スペインの動物病院を訪れた。何でも、2日間に渡って食欲不振、元気消失、呼吸困難を呈しているという。血液検査では、軽度の貧血が認められた(PCV22.4%)。しかし、他の項目には特段の異常を見付からなかった。一方、胸部X線検査と超音波検査では、心タンポナーデと胸水が発覚した。心嚢水を採取する。幸い、心タンポナーデは解消されたようであった。加えて、50mLの胸水も採取された。両サンプルを分析した結果、好中球とマクロファージを主体とした炎症があることが判明した。一体、彼女の身に何が起こったのだろうか。
心嚢水、胸水、そして血液サンプルをPCRにかけると、病原体の存在が浮かび上がった。Bartonella henselae。赤血球に寄生する病原体であった。他方で、細菌とコロナウイルスは陰性であった。そのため、ニューキノロン系抗生剤での治療が始まった。この治療は5週に及んだ。しかし、PCRの陽性結果は変わらなかった。抗生剤をドキシサイクリンに切り替える。6週後、PCRは陰性となった。
論文を発表したスペインの大学および動物病院らは、本症例に心不全は無かったと述べる。そうであったとしても、胸水や心嚢水が貯留したこと、B. henselaeが検出されたことを踏まえて訴える。胸水・心嚢水の鑑別リストに同病原体を追加する必要があると。仮に、今現在、猫の診察で謎の胸水・心嚢水に悩んでいる獣医師がおられるならば、B. henselaeの存在をチェックし、その治療を検討してみると良いかも知れない。

ニューキノロン系抗生剤(マルボフロキサシン)の用量は5mg/kg PO q24h、ドキシサイクリンは5mg/kg PO q12hです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40028371/


