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オランダで飼育される犬猫の花火恐怖症について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

日本では夏の空に、欧州では秋・冬の空に打ち上がることの多い花火は、ヒトにとって美しく華やかなものであるが、ペットにとっては恐怖・不安の対象になることがあり、硬直したり、隠れたり、逃げ回る行動を誘発するキッカケになる。そのため、この恐怖や不安を軽減することは獣医学の課題なのである。果たして、彼らの花火恐怖症(音恐怖症)を軽減する方法はあるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ユトレヒト大学は、オランダで飼育される3000匹以上の犬と600匹以上の猫とそのオーナーを対象にして、ペットと花火の関係性を調べる研究を行った。なお、同研究ではペットの直接的な観察は実施しておらず、オーナーの証言によって情報を取得している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ペットと花火の関係性◆
・オーナーの64%が9月以降に花火の音を聴いている
・結果ペットは1年に複数回花火の影響を受ける
・犬の花火恐怖症のリスクは「幼少期に騒音に慣れなかった」ことで上がっていた
・一方猫では幼少期に慣れることは稀であった(4%の個体のみ)
・花火恐怖症に対する治療が永続的に効果を発揮することは稀であった(良くても成功率30%未満)
・花火恐怖症には①遺伝的な要因と②幼少期の慣れが関連しているようであった
・しかし①も②もオーナーの同意を得ることは難しかった

 

上記のことから、犬の花火恐怖症の発症リスクは幼少期に騒音に慣れさせることで軽減することが窺える。しかし、その「幼少期に慣れさせること」の意味をオーナーに理解してもらうには工夫が必要であることも分かる。また、この慣れは猫に通用しづらいという現状があるようだ。よって、今後、犬の花火恐怖症の予防に関する啓蒙・インフォームドコンセントについて、そして猫の花火恐怖症を予防する方法について、加えて両者の花火恐怖症に対する有効な治療法について議論され、花火が起こす爆音の苦痛から解放されるペットが1匹でも多く増えることを期待している。

犬のオーナーの54%、猫のオーナーの23%が花火恐怖症に対するアドバイスを必要としていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39497813/


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