以前、犬のアトピー性皮膚炎はステロイド剤によって治療されていた。しかし近年、このステロイド剤に代わる新しい薬オクラニシチブが流通するようになり、新薬が積極的に使用されることとなった。そして、ある問題点が生じた。莫大な研究費がかかっている新薬は高価になりがちなのだ。それに対して、何十年も前から汎用されているステロイド剤の一つ、プレドニゾロンは非常に安価である。そこで、疑問が浮かぶ。新薬に傾倒すると医療費は高騰する。一方、プレドニゾロンを選択すれば家計に優しいが、オクラニシチブよりも効果が低いのではと心配になる。どうにかして丁度良いバランスは取れないものだろうか。
冒頭のような背景の中、ブラジルの大学らは、アトピー性皮膚炎と診断された犬20匹以上を対象にして、2つの治療法の効果を検証する研究を行った。なお、その治療法とは、①プレドニゾロン(0.5mg/kg、q24h 7days)の後にオクラシチニブ(0.5mg/kg 1day)、1日休薬、プレドニゾロン(0.5mg/kg 1day)7週間繰り返すものと、②オクラシチニブ(0.5mg/kg q12h 2wks)の後にオクラシチニブ(0.5mg/kg q24h 6wks)を投与するものの2つである。また、本研究では、アトピー性皮膚炎の重症度スコア(CADESI-04)と掻痒の程度を表すスコア(PVAS)にて、症例の経過が評価されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆①と②の効果と費用◆
・両群ともに治療開始から7日目の時点でCADESI-04とPVASが大幅に改善した
・治療開始から14日目から60日目においてもスコアは安定しており両群に差は無かった
・①では多飲多尿と過食という副作用が見られた(14日目には解消された)
・②では過食と嘔吐という副作用が見られた
・両群で肝酵素の軽度上昇が見られた
・②に比べて①の医療費は約73%低かった
上記のことから、一部の症例で副作用が認められるが、①と②の効果に優劣は無いと考えられる。一方で、医療費は①の方が断然安いようである。よって、オクラニシチブ単独での治療に経済的負担を感じているオーナーに遭遇した場合は、①を提案してみると良いかも知れない。

犬はランダムに①と②に振り分けられました。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39895463/