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ウェルシュ・コーギーの鼻に発生した血管肉腫に適応したTACEという治療法

投稿者:武井 昭紘

持続的に鼻汁が分泌され、顔面が変形した10歳齢のウェルシュ・コーギーが韓国の動物病院を訪れた。診察の結果は、鼻に発生した血管肉腫。放射線療法と化学療法が適応されることのある疾患だった。しかし、治療を開始した当初に症状が緩和されただけで、11ヶ月後には再発してしまった。もはや、打つ手は無い。担当する獣医師はそう考えたかも知れないが、ある緩和療法を実践することを思い立った。

その緩和療法とは、transarterial chemoembolization(TACE)。人医療では、肝臓にできた腫瘍に対する治療法で、腫瘍に分布する血管を薬剤で塞栓させる技術である。このTACEを本症例に適応した。すると、腫瘍のサイズは縮小していったという。縮小の程度は順調だった。CT検査で追跡をした結果、1、3、7、10ヶ月目に継続的に腫瘍は小さくなった。無論、症状も緩和されたとのことだ。そして、幸いなことに、塞栓した血管の血流再開は起きなかったという。

論文を発表した韓国の忠北大学校は、他に選択肢(治療法)が無い場合において、TACEを実践する意義はあると述べる。よって、今後、TACEを適応できる犬の腫瘍(病態別、部位別)を特定する研究が進み、また、TACEに関するガイドラインが作成され、既存の治療法では再発してしまう腫瘍の寛解率が向上することを期待している。

本症例に重大な合併症は起きなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2024.1505671/full


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