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熱中症を予防する最も効率の良い犬のクールダウン方法に関する研究

投稿者:武井 昭紘

何らかの原因で熱中症の危機に瀕した犬を助けるためには、“Cool first, transport second”の原則を遵守することが望ましいとされる。つまり、動物病院への搬送は二の次で、現場で冷却措置を講じることが大切なのだ。そして、最も効果的な冷却措置は、体温が異常に上昇した犬の体全体を「水に浸ける」ことだ言われている。しかし、現実を見て欲しい。小型犬ならまだしも、中型犬以上の体が浸かる水を即座に用意することは簡単ではない。だとするならば、「水に浸ける」以外に効率的な方法はないものだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ペンシルバニア大学は、ワーキングドッグ12匹を対象にして、6月末〜7月末における10分間の運動によって誘発されて上昇した体温(40.6℃以上)を低下させる、あるいは、誘発された熱中症の兆候(2つ以上)を解消する4つの方法について検証する研究を行った。なお、その4つの方法とは下記の通りである。

◆比較された4つの冷却措置◆
①首をアイスパックで冷やす
②濡れたタオル(22℃程度)で首を冷やす
③濡れたタオルで腋窩を冷やす
④自発的に頭を水(22℃)に浸けてもらう

④は何を言っているのか不思議に思うだろが、詰まるところ、犬が意識的に自分の頭を水に浸けて冷やすことを意味する。無論、報酬を使用したトレーニングを要する。オヤツやオモチャを得るためにクーラーボックス内の水に眼あるいは耳の位置まで浸かるように訓練するのだ。

 

結果はというと、④がベストであった。①〜④の中で、運動後5分以内での体温が最も低く、その後35分間で平熱まで冷却され、非常に効率の良い冷却措置だった。とはいえ、問題はある。④は犬の意識があること、その犬がトレーニングされていることが前提条件である。熱中症で意識が朦朧とし、また意識を失った犬に適応することは困難であり、トレーニングをしていない犬でも同様だ。よって、今後、自発的な行動が期待できない犬の頭部冷却方法について議論され、熱中症の救命率の向上と治療時間の短縮が実現することを期待している。

研究に参加した犬は、運動後に飲水もしています。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/aop/javma.24.06.0368/javma.24.06.0368.xml


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