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気温の上昇とフィラリアの感染リスクとの関係性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

近年の地球は暑い。日本を含め、世界各地で記録的な気温の上昇が起きている。もはや、地球温暖化などという生温い表現では足りず、地球沸騰化と言われるようになる程だ。そして、この地球沸騰化は、あらゆる社会、あらゆる業界で問題となっている。無論、動物医療業界も例外ではない。特に、フィラリアをはじめとする寄生虫の予防には大きな変革が起きるかも知れないからだ。現状、夏季の気温が下がる見込みは全くない。上がるばかりだろう。その影響は我々の業界に影を落とすか。これから注視をする必要がある。

 

冒頭のような背景の中、カナダの大学らは、気温の上昇がフィラリア 予防に齎す影響について考える研究を行った。なお、同研究では、気温のデータを用いてフィラリアの感染リスクを算出するためにheartworm development units(HDU)を採用しており、過去28年間(1996年〜2023年)においてオンタリオ州に位置する各都市の1日HDUの加算が130を超えた日を調べている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆気温の上昇とフィラリアの感染リスク◆
・最も早く1日HDUが130を超えた日は5月25日であった(2012年のウィンザー)
・最も遅かった日は8月7日であった(2004年のサンダーベイ、2014年のトモバリー)
・中央値は6月7日〜7月18日であった(各都市で異なる)
・調査期間中では1日HDUが130を超えた日に有意な変動は無かった
・しかし平均気温が1℃上昇するごとに1日HDUが130を超える日が中央値で4.5〜6日(2〜17日)短縮される計算になった

 

上記のことから、気温の上昇によって1日HDUが130を超える日は短縮される可能性があることが窺える。とはいえ、春先から初夏にかけてフィラリア予防を開始すれば、その短縮の影響をカバーできると考えられる。よって、現行のフィラリア 予防を実践しつつ、万が一の急激な気候変動の際には臨機応変に対応して頂けると幸いである。

1日HDUは、1日の平均気温-14(臨界温度)で算出されます。 平均気温は、(最高気温+最低気温)÷2 で算出されます。直近30日の1日HDUの合計が130を超えた時にフィラリアに感染するリスクがある時期が始まり、130を下回った時に感染するリスクがある時期が終わると判断します。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39649747/


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