8ヶ月齢の猫(去勢オス)が急性の嘔吐を呈して、イギリスの動物病院を訪れた。診察の結果、小腸に異物が見付かり、外科手術にて摘出することが決まった。これで解決するだろうと思われたが、術前から術後まで一貫した低血糖と術中の低血圧の対応に悩まされた。ブドウ糖に加えて、ドーパミンを含む輸液が必要になった。幸い、手術から24時間以内に血糖値も血圧も正常化した。しかし、この症例は進行性の多尿(最大で14 mL/kg/h)に陥ってしまった。果たして、彼の身に一体、何が起きたのだろうか。
高窒素血症や飲水量が過剰になった兆候は認められなかった。だが、輸液量を減らそうとすると、体重の減少、低血圧、脱水が生じた。また、尿比重は1.005~1.010の範囲に収まり、水を制限しても状況は変わらなかった。中枢性尿崩症と暫定的に診断が下った。入院(手術)から5日目、デスモプレシンが投与された。その後、尿量は減少し、4時間以内に体重が増加した。入院中に計4回、同薬は投与され、それ以上は必要としなかった。退院時の尿量は3mL/kg/h。3ヶ月後には、完全に多い尿が解消し、尿比重は1.050オーバーとなった。
この猫には神経症状も認められたと、症例を発表したイギリスの大学および動物病院らは述べる。また、治療経過を合わせると、暫定診断(中枢性尿崩症)は妥当だと訴える。とはいえ、低血糖および低血圧に起因する脳の損傷から「可逆性」の尿崩症が発生した例は他に無いという。万が一、診察を担当する猫に類似した病態が生じた場合は、尿崩症の可能性を探って頂けると幸いである。

デスモプレシンの用量・用法は、1µg/head SCです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39502681/


