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猫の精巣の活動を抑えるナノ粒子の効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

去勢手術は、ペットの過剰繁殖を防ぐ有効な手段である。しかし、特定のオーナーを持たない無数のストリートドッグやストリートキャットの全てに同手術を適応することは、非現実的である。そのため、手術以外の方法で繁殖を防ぐアイデアが求められているのだ。無論、そのアイデアは動物の福祉を悪化させないものでなくてはならない。つまり、彼らに苦痛・ストレスを与えるものであってはならないのだ。

 

冒頭のような背景の中、タイの大学らは、壊死を伴うことなく細胞のアポトーシスを誘導するアルファマンゴスチンに着目して、同成分を内包したナノ粒子を臨床上健康な猫の精巣に投与する研究を行った。なお、同研究では、①アルファマンゴスチンを含むナノ粒子を精巣内に投与するグループと、②アルファマンゴスチンを含まないナノ粒子を精巣内に投与するグループのデータが比較されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆アルファマンゴスチンの精巣内投与の効果◆
・①②ともに痛みやストレスに伴う合併症を起こさなかった
・①で組織の広範な変性が生じ精細管の欠如が起きた
・しかし一部の領域には正常な精細管が存在していた
・①で精子を形成する細胞の配列が無秩序になった(特定の領域)
・①で特定の領域に精子細胞が認められなかった
・①の精巣で精子の減少が起きた
・しかし精巣上体には精子が残存していた(研究期間の168日間では繁殖能力を維持した)
・①②ともに組織の炎症、硝子化、線維化、壊死は認められなかった
・①の精巣の容量(外科的摘出後)、テストステロン濃度、アポトーシスの程度を示す指数に有意な変化は無かった

 

上記のことから、アルファマンゴスチンを含むナノ粒子を精巣内に投与する手法は動物の福祉を損なわないことが窺える。しかし一方で、精巣内の変化は限定的で、少なくとも6ヶ月弱は繁殖能力が維持されることも分かる。よって、今後、去勢手術と同等の効果を発揮するべく製剤の改良が行われ、ペットの過剰繁殖を防ぐ手段が一つ増えることを期待している。

①は28匹、②は4匹で構成されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39488949/


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