猫の呼吸器のトラブルは一次診療施設でも良く見られるもので、時に病因が複雑となって致命的となることから、Feline respiratory disease complex(FRDC)という総称で呼ばれている。また、このFRDCには多くの病原体が関与していると言われているのだ。そこで、疑問が浮かぶ。病因は複雑で多くの病原体が関わる中で、どのような因子が重症度を上げるのだろうか。
冒頭のような背景の中、アメリカの大学らは、北米で猫の呼吸器に感染する病原体の検査サービスを提供する研究所3軒に協力を仰ぎ、臨床上健康な猫と呼吸器症状を持つ猫の臨床データを解析する研究を行った。なお、データには病原体の検査結果は勿論のこと、年齢、性別、季節性、臨床症状に関する情報も含まれている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆FRDCの重症度を上げる因子◆
・多く検出された病原体は①マイコプラズマ、②カリシウイルス、③ヘルペスウイルスであった
・病原体は臨床上健康な猫からも検出された
・そのため陽性結果を解釈することは難しいことであった
・①と②、①と③の同時感染は重症度を上げる予測因子だった
・年齢、性別、季節性の影響は僅かであった
上記のことから、特定の病原体の同時感染はFRDCの重症度を上げることが窺える。しかし一方で、臨床上健康な猫からも病原体が検出されることも分かる。よって、今後、病原体が陽性となった臨床上健康な猫の経過を追跡する研究が進み、複数の病原体が感染した猫の臨床症状を緩和する方法(有効な対処法・治療法とは何か)について議論され、FRDCの治療成績が向上することを期待している。

感染状況を調べた病原体はBordetella bronchiseptica、Chlamydia felis、Mycoplasma、Felid alphaherpesvirus 1 (FeHV-1)、feline calicivirus(FCV)、influenza Aだとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39290513/


