交通事故や落下事故に遭った動物には鈍性外傷が生じて、内臓が破裂することがある。その中で、下部尿路の破裂は、血液の他にも尿が腹腔内に漏れて病状が悪化するリスクを上げるのである。そこで疑問が浮かぶ。この下部尿路の破裂は、どれ程の頻度で発生しているのだろうか。
冒頭のような背景の中、ヨーロッパの動物病院らは下部尿路の破裂に着目して、フランスのとある動物病院の外科に入院した犬猫の診療記録を解析する研究を行った。すると、580匹以上のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆重度の鈍性外傷を経験した犬猫における下部尿路の破裂の発生状況◆
・発生率は1.36%(8件)であった
・犬における発生率は1.2%(3件)であった
・猫における発生率は1.4%(5件)であった
・8件中5件が膀胱破裂で最多であった
・骨盤骨折が無い症例に比べて有る症例では下部尿路が破裂する確率が6.4倍高かった
・しかし8件中3件では整形外科的な損傷は無かった
・8件全てで腹水が確認された
・8件中5件で腹水中のBUNとCREが上昇した
・8件中4例で排尿機能は維持されていた
上記のことから、骨盤骨折を認める症例では必ず下部尿路の破裂をチェックするべきだと言える。しかし一方で、骨盤骨折が無くとも、腹水中のBUNやCREが上昇してなくとも、排尿機能が維持されていたとしても、下部尿路の破裂を完全に否定することはできないことも分かる。よって、鈍性外傷後に腹水が生じた症例でも必ず下部尿路の破裂をチェックして頂けると有り難い。

犬は246匹、猫は339匹が研究対象になったとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39278639/


