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メラニン色素が少ない犬の黒色腫を高精度で診断するマーカーの開発

投稿者:武井 昭紘

黒色腫は、犬の口腔に発生する一般的な腫瘍で、メラニン色素を持つメラノサイトが腫瘍化したものである。しかし、全ての黒色腫で色素が確認されることはなく、色素が欠乏した腫瘍細胞が存在するのが現状となっている。つまり、メラニン色素だけを頼りに細胞診など顕微鏡学的検査を進めることができないのだ。言い換えると、黒色腫を認識する確固たるマーカーが求められているのである。

 

そこで、アメリカはオハイオ州の大学および動物病院らは、メラノサイトや神経組織の発達に関与し、且つ、黒色腫、乳癌、神経系の腫瘍組織に発現するSry-related HMG-box gene 10(SOX-10)という転写因子に着目して、犬の①メラノサイト由来の腫瘍組織と②メラノサイト以外の細胞由来の腫瘍組織を免疫組織学的に解析する研究を行った。なお、同研究では、黒色腫の既存マーカー各種についても調べられている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬の黒色腫に対するSOX-10の診断精度◆
・①は147件、②は51件が集められた
・検証したマーカーの中でSOX-10の精度が最高であった(96.7%)
・SOX-10で標識された142件の91.5%で腫瘍細胞の75%以上が染色された
・②の14件がSOX-10で標識された
・②における特異度は92.7%であった

 

上記のことから、SOX-10 の精度は高いことが窺える。また、②の中にはSOX-10で標識されるものがあるものの、高い確率でメラノサイトとは区別できると言える。よって、今後、SOX-10をマーカーとした黒色腫の診断法が確立し、当該疾患に関する診療が効率化されることを期待している。

②の中でSOX-10によって標識された腫瘍は、乳癌、神経膠腫、口腔軟部肉腫だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39239974/


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