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消化管内寄生虫に感染した子猫に対する汎白血球減少症ウイルスワクチンの効果

投稿者:武井 昭紘

一説によると、消化管内に寄生虫が存在する犬猫にワクチン接種をすると、その効果が充分に得られないとされている。そのため、ワクチン接種の前に糞便検査を実施して、寄生虫の有無を確認することが望ましいようなのだ。では実際のところ、消化管内寄生虫に感染することで、ワクチンの効果は本当に減少するのだろうか。もしも仮にするのであれば、どれ程の損失になるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ドイツの大学および動物病院らは、臨床上健康な8〜12週間齢の子猫70匹以上に汎白血球減少症ウイルス(feline panleukopenia virus、FPV)に対するワクチンを接種し、抗体価を測定する研究を行った。なお、同研究ではワクチンを4週間間隔で2回接種しており、研究開始時点(0週目)と接種から8週間後に抗体価を測定している。また、研究に参加した子猫は、消化管内寄生虫の有無がチェックされている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆消化管内寄生虫に感染した子猫に対するFPVワクチンの効果◆
・約23%の子猫で寄生虫が確認された(①)
・約77%の子猫には寄生虫が居なかった(②)
・①の約24%は0日目に抗FPV抗体を有していた
・②の約42%は0日目に抗FPV抗体を有していた
・①の約77%で8週間後の抗体価が4倍以上に上昇した(ワクチンの効果あり)
・②の約56%で8週間後の抗体価が4倍以上に上昇した
・0日目においても8週間後においても①②の抗体価に有意差は無かった

 

上記のことから、FPVワクチンの効果は消化管内の寄生虫によって低下しないことが窺える。よって、ワクチン接種前の消化管内寄生虫に関する検査は必須ではないと考えられる。また、寄生虫の感染をもってワクチン接種を延期するという判断は理論的ではないと言えるのではないだろうか。

消化管内寄生虫として猫回虫(①の約70%、重複あり)、イソスポラ(①の約35%)、Capillaria species(約6%)が検出されているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39212546/


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