犬の慢性腸症(chronic inflammatory enteropathy、CIE)は、その治療反応性から大きく3つのタイプに分類される。それは、食物反応性腸症(food-responsive enteropathy、FRE)、抗生剤反応性腸症(antibiotic-responsive enteropathy、ARE) 、免疫抑制剤反応性腸症(immunomodulator-responsive enteropathy、IRE)である。また、全く治療に反応しないタイプを振り分けるとしたら、非反応性腸症(nonresponsive enteropathy、NRE) となるだろうか。そして、これらの分類は原則1度きりで、経過を追跡する途中で再評価されることはない。そこで、疑問が浮かぶ。当初の分類が途中で変わることはないのだろうか。読者の皆様は、分類が決して変わることはないと言えるだろうか。
冒頭のような背景の中、チューリッヒ大学は、CIEと診断された犬60匹の診療記録を解析し、①診断され最初の治療反応性を評価した時、②診断から1年が経過した時の分類を特定する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆①の分類◆
・45%の症例(27例)がFREに分類された
・50%の症例(30例)がIREに分類された
・5%の症例(3例)がNREに分類された
・AREに分類された症例は居なかった
・FREの63%(17例)は少なくとも1度は食餌療法が失敗していた
・免疫抑制剤の単独療法を受けたのはIREの1例のみであった
◆②の分類◆
・73%の症例(44例)がFREに分類された
・23%の症例(14例)がIREに分類された
・3%の症例(2例)がNREに分類された
・AREに分類された症例は居なかった
◆再評価の状況◆
・40%の症例(24例)で分類が変更された
・24例の79%(19例)はIREからFREへの変更であった
・期待する治療結果を得る上で抗生剤は必須ではなかった
上記のことから、IREからFREに変更される症例が多いことが窺える。一方で、FREに分類されるも食餌療法が1度は失敗する可能性も少なくないのが現状である。よって、今後、CIEに対する食餌療法の成功率を上げる研究が進み、治療成績が向上することを期待している。

研究を発表した大学は、複数回の食餌療法が実施されていれば、IREに分類される可能性が減るのでないかと述べています。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39183535/


