エーラス・ダンロス症候群は、コラーゲンの構造異常が生じる疾患で、同物質の存在する組織が脆弱になり日常生活や動物病院での処置・治療に支障をきたす病的現象である。また、ヒトが発症する当該疾患では、COL5A1またはCOL5A2という遺伝子の変異が一因になっているとされている。しかし、犬ではこれらの変異の臨床的意義が詳しく分かっていないのが現状である。
冒頭のような背景の中、アメリカの大学および動物病院らは、エーラス・ダンロス症候群を疑う臨床症状を呈した犬7匹を対象にして、彼らの病態とCOL5A1の変異について調べる研究を行った。なお、同研究では遺伝子配列の解析とともに、皮膚の生検サンプルを用いて病理検査が実施されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬のエーラス・ダンロス症候群の病態とCOL5A1の変異◆
・全ての症例で皮膚の脆弱性、皮膚の過進展が確認された
・6例で関節の可動域の異常が認められた
・5例で瘢痕組織が形成されていた
・追跡終了または死亡時の平均年齢は12歳(6.5~14歳)であった
・6つの異なる変異(ヘテロ接合)が発見された
・真皮に分布するコラーゲンの微細構造(異常)は変異に応じて全て異なっていた
上記のことから、COL5A1の変異は犬のエーラス・ダンロス症候群に関連していることが窺える。加えて、変異の状況によってコラーゲンの微細構造が変化することも分かる。よって、今後、それぞれの変異に伴うコラーゲンの構造的な変化と臨床症状を比較する研究が進み、コラーゲンの機能がより深く理解され、エーラス・ダンロス症候群の新しい予防法・治療法が開発されることを期待している。

臨床症状については医療記録、獣医師の見解、問診(オーナーへの聴き取り)を参考にしたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39175162/


