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犬の特発性肺線維症と線維芽細胞活性化タンパク質の関連性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

犬の特発性肺線維症(Canine idiopathic pulmonary fibrosis、CIPF)は、文字通り肺が線維化する病的現象で、罹患犬に進行性の呼吸不全を齎して死へと誘う病気である。そのため、当該疾患の病態を詳細に把握し、適格な診断と有効な治療を行う方法を確立することが重要とされているのだ。一方、話は変わるが、ヒトの特発性肺線維症では、線維芽細胞活性化タンパク質(fibroblast activation protein、FAP)なるものがアップレギュレートしていると言われている。そこで、疑問が浮かぶ。このFAPは、CIPFと何らかの関係性を持っているのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、欧米の大学らは、①CIPFを発症したウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア22匹と②臨床上健康な犬15匹を対象にして、彼らの血漿に含まれるFAP濃度と肺組織におけるFAPの発現レベルを調べる研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆CIPFと線維芽細胞活性化タンパク質の関連性◆
・①の肺組織の90%でFAP陽性となった
・②ではFAP陰性であった
・FAPの発現はCIPFの重症度と関連していた
・特に線維芽細胞の活動性と関連が深かった
・FAP陽性細胞は線維化が進んでいると思われる肺の領域で密集していた
・血漿中FAP濃度は②に比べて①で有意に低かった

 

上記のことから、肺組織におけるFAPの発現は、CIPFの病態に深く関連していることが窺える。よって、今後、FAPの発現を抑える治療法と発現を未然に防ぐ予防法を確立する研究が進み、「発症すると致死的」という絶望的な状況が改善することを願っている。

本研究では、CIPFの重症度と線維化の活動性を数値化して評価しています。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2024.1416124/full


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