一般的に、院内で実施する尿検査は安価であり、簡便であり、結果が出るまで時間が短い。一方、尿タンパク/クレアチニン比(urine protein creatinine ratios、UPCR)を代表するように、院外に発注をする尿検査は相応の価格であり、日数を要する。そこで、一部の獣医師が「とある事」を考えた。比重計で計測ができる尿比重と尿試験紙から得られる尿タンパクの数値をもってUPCRの代わりとなる指標にはならないかと。尿タンパク/尿比重比(dipstick urine protein to USG ratio、DUR)なる数値が小動物臨床に応用できないかと。
冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、犬猫の尿サンプル(犬308匹、猫70匹)から測定・算出されたUPCRとDURの関連性を調べる研究を行った。なお、同研究では、DURを『尿試験紙のタンパク質の結果(微量=15mg/dL、1+=30mg/dL、2+=100mg/dL、3+=300mg/dL、4+=2000mg/dL)/([尿比重−1] × 1000)』と定義している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬猫のUPCRとDURの関連性◆
・両者間に正の相関関係があった(中程度)
・この関係は尿沈渣、尿pH、尿糖の影響を受けなかった
・0.5を超える犬のUPCに対するDUR(参照値1.4)の感度は89%、特異度は83%であった
・この時の陽性的中率は96%、陰性的中率63% であった
・0.4を超える猫のUPCに対するDUR(参照値2.1)の感度は70%、特異度は100%であった
・この時の陽性的中率は100%、陰性的中率75% であった
上記のことから、陰性的中率の向上が課題ではあるが、DURは小動物臨床への応用が可能だと考えられる。よって、今後、精度高めるべくDURの定義の見直し(計算式の改編、あるいは、補正式の考案)が進み、UPCに変わる安価な検査法が誕生することを期待している。

大学らは、タンパク尿の除外を目的にした場合、DURは推奨できないと述べています。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38305084/