猫の慢性腎臓病(Chronic kidney disease、CKD)は、文字通り慢性的な腎臓の炎症に伴ってネフロンが線維性組織に置き換わっていく病気である。つまり、当該疾患の病態(進行度)とリンクする炎症マーカーが存在していても不思議ではないのである。では、そのマーカーとは一体何であろうか?
冒頭のような背景の中、スロベニアのリュブリャナ大学は、①臨床上健康な猫とCKD(②IRISステージ1と2、③ステージ3と4に分類)と診断された対象にして、彼らのCBCから算出できる炎症マーカーの数値を比較する研究を行った。なお、同研究にて採用されたマーカーは、好中球/リンパ球比(NLR)、単球/リンパ球比(MLR)、血小板/リンパ球比(PLR)、そしてSII(systemic immune-inflammatory index、血小板数×好中球数/リンパ球数)である。すると、①②に比べて③の炎症マーカーの数値は有意に高いことが判明したという。また、これらの数値はBUN、CRE、尿検査結果と弱い、または、中程度の相関関係にあることが分かったとのことである。
上記のことから、本研究で採用された炎症マーカーは猫のCKDの進行度を把握することに利用できると考えられる。よって、今後、これらのマーカーが病期分類に組み込まれるとともに、その数値の上昇を抑え込む治療法について議論・検証され、猫のCKD治療に新たな見解が加わることを期待している。

①は32匹、②は62匹、③は26匹で構成されていたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38929432/