CTおよびMRI検査は、X線検査や超音波検査では得られない詳細な臨床所見を教えてくれる。そのため、小動物臨床においても様々な疾患の診断に利用されているのだ。しかし、両検査は非常に高額である。オーナーの経済的理由により、これらの検査が必要と思われる全ての症例に適応できないのが現状である。そこで、疑問が浮かぶ。CTやMRI検査を実施しないことで、すこぶる経過が悪くなることはあるのだろうか。
冒頭のような背景の中、ケンブリッジ大学は、CT・MRI検査のデータの有無に関わらず、椎間板ヘルニア(椎間板が突出した病態)が疑われた犬120匹以上の経過を調べる研究を行った。なお、研究に参加した症例には片側の麻痺または対麻痺が起きていたとのことだ。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆椎間板ヘルニアが疑われるも画像診断を受けなかった犬の経過◆
・81%の症例で画像診断が実施されなかったが経過は良好であった
・3%の症例は画像診断を実施せず安楽死となった(CT・MRI検査以外で診断した可能性を含む)
・16%の症例は画像診断を行い、外科または内科的管理で経過が良好であった
上記のことから、多くの症例が画像診断を経ずとも経過が良好であることが窺える。よって、今後、画像診断を必須とする症例を判別するアルゴリズムが作成され、オーナーに経済的負担を強いる高額な画像診断が過剰に行われる状況の解消が進むことを期待している。

本研究では、椎間板ヘルニアの他に、脊髄に虚血病変が疑われた症例と髄核が突出したヘルニアのデータを解析されておりますので、リンク先の論文をご参照ください。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38612256/