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犬の不妊・去勢手術とその後に罹患する疾患との関連性に関する新たな研究

投稿者:武井 昭紘

日本は勿論のことアメリカでも、犬の不妊・去勢手術は生後1年までのうちに実施されるという。しかし、カリフォルニア大学の研究によると、特定の35品種に限ってだが、早期の(生後1年までの)不妊・去勢手術は関節のトラブルや腫瘍の発生リスクを上昇させるようなのだ。そこで、疑問が浮かぶ。数多存在する犬の品種全てに、この現象は起きるのだろうか。品種一つひとつを取り上げて、実状を把握する必要があると思われる。

 

冒頭のような背景の中、同大学は、成犬の体重が20kg以上となる①ジャーマン・ショート/ワイヤーヘアード・ポインター、②マスティフ、③ニューファンドランド、④ローデシアン・リッジバック、⑤シベリアン・ハスキーの5品種を対象にして、不妊・去勢手術とその後に罹患する疾患との関連性を調べる研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬の不妊・去勢手術とその後に罹患する疾患との関連性◆
・①では関節のトラブルと腫瘍の発生リスクが上昇した
・②のオスでは関節のトラブルと腫瘍の発生リスクが上昇した
・②のメスでは関節のトラブルの発生リスクが上がる傾向にあった
・③のオスでは関節のトラブルの発生リスクが上がる傾向にあった
・③のメスでは関節のトラブルの発生リスクが上昇した
・④のメスでは腫瘍の発生リスクが上昇した
・⑤では有意に関連性は見出せなかった(メスでは関節のトラブルの発生リスクが上がる傾向にあった)

 

上記のことから、過去に報告された35品種と同様に、本研究で対象となった品種の一部で早期の(生後1年までの)不妊・去勢手術が関節のトラブルや腫瘍の発生リスクを上昇させていることが分かった。よって、今後、これらの品種における不妊・去勢手術の最適な実施時期、または、不妊・去勢手術の是非について議論が深まり、乳腺腫瘍や問題行動などの治療・予防、過剰繁殖の防止を目的として実施した不妊・去勢手術で関節のトラブルや腫瘍のリスクが上がるといったジレンマが解消されることを期待している。

関節のトラブルには股関節形成不全、肘関節形成不全、前十字靭帯断裂、腫瘍にはリンパ肉腫、肥満細胞腫、血管肉腫、骨肉腫などが含まれるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2024.1322276/full


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