ニューロフィラメント軽鎖(neurofilament light chain、NfL)は、神経組織である軸索の損傷に応じて末梢血中に放出される物質である。つまり、①構造的な異常を伴った脳疾患を抱える動物の血液中でNfL濃度が上昇していると考えられるのだ。一方、話は変わるが、②特発性てんかんを抱える動物の脳には構造的な異常は認められない。そこで、疑問が浮かぶ。血液中のNfL濃度を測定することで、①と②を鑑別できるのではないだろうか。
冒頭のような背景の中、韓国の忠北大学校は、①または②と診断された犬と③臨床上健康な犬計150匹以上を対象にして、彼らの血液中に含まれるNfLの濃度を測定する研究を行った。なお、同研究における①は原因不明の髄膜脳炎、水頭症、脳腫瘍で構成されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆血液中NfL濃度と①②の鑑別◆
・①の原因不明の髄膜脳炎は45匹、水頭症は20匹、脳腫瘍は19匹、②は31匹、③は37匹で構成されていた
・②③に比べて①のNfL濃度は有意に高かった
・27.10pg/mLをボーダーラインにすると感度約87%、特異度約74%の確率で①と②を判別できる
・①と②を判別精度は約0.87(1が最高値)であった
上記のことから、血液中NfL濃度は①と②を鑑別するバイオマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、この測定手法が商業化され、中枢神経系疾患の診療が効率化されることを期待している。また、特発性てんかんと診断されるもMRI検査を受けていない症例が多い現状に、新たな診断法として血液中NfL濃度測定が追加されることを願っている。

原因不明の髄膜脳炎と水頭症の症例では、病変のサイズと血液中NfL濃度に相関関係があったとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38778568/