炎症を伴い、あるいは、掻痒感を生じる皮膚病は多種多様である。そのため、これらを鑑別し適切な治療を施すことが重要とされているのだ。そして、この鑑別を必要とする疾患の一つがアトピー性皮膚炎である。おそらくではあるが、『アトピー性皮膚炎と他の皮膚疾患を的確に鑑別することが叶えば、診療はより効率的になる』と考えている獣医師は多いだろう。特に、獣医師個々人の経験や主観に頼ることなく、バイオマーカーという客観的な指標で鑑別することができればと。
冒頭のような背景の中、アメリカの大学は、①臨床上健康な犬、②アトピー性皮膚炎の犬、③アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患で炎症や掻痒感を抱えている犬の3つのグループを対象にして、皮膚疾患に関与しているとされるホスホジエステラーゼ4D(末梢血中の単球由来)と血漿中のmiR-203およびmiR-483の遺伝子発現レベルを調べる研究を行った。なお、同研究において、アトピー性皮膚炎以外の炎症性または掻痒性皮膚疾患とは、落葉状天疱瘡、疥癬、皮膚リンパ腫、皮膚糸状菌症などを指している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆アトピー性皮膚炎とその他の掻痒性皮膚疾患を鑑別するバイオマーカー◆
・①②に比べて③のホスホジエステラーゼ4Dの遺伝子発現レベルが高かった
・①に比べて②③のmiR-203の遺伝子レベルが高かった
上記のことから、ホスホジエステラーゼ4DとmiR-203の遺伝子レベルをマーカーにすると、①②③を鑑別できることが分かる。よって、今後、これらのマーカーの商業化が進み、客観性の高い犬のアトピー性皮膚炎の診断法が確立されることを期待している。

ホスホジエステラーゼ4Dの発現レベルとアトピー性皮膚炎の重症度に関連性は無いとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38734860/