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手術が終わり麻酔から覚醒中の犬に起きる低酸素血症の発生頻度を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

麻酔処置や外科手術を実施するにあたって、注意するべきことの一つは低酸素血症である。麻酔や手術の影響で不安定になった呼吸によって生じるこの危険信号は通常、パルスオキシメーター(SpO2)でのモニタリングで察知される。吸入麻酔と酸素を同時に吸入している麻酔中・手術中はさることならがら、手術が終わった後も、①気管チューブと麻酔回路を切り離し空気中の酸素で動物が呼吸している時も、②抜管し自発呼吸で覚醒を待っている時もモニタリングされるのだ。しかし、①または②の時点におけるSpO2の参照値についは議論が尽くされていないのが現状なのである。果たして、これらのタイミングでは、SpO2と低酸素血症の関係性がどうなっているのだろうか。また、低酸素血症の発生頻度は一体どれ程なのだろうか。

冒頭のような背景の中、イタリアの大学らは麻酔が掛けられた犬650匹以上を対象にして、②の時点における低酸素血症の発生頻度を調べる研究を行った。なお、同研究では、動脈血酸素分圧にして80mmHg未満を低酸素血症と定義しており、「②の時点でのSpO2が95%未満」という指標によって感度100%、特異度97.4%の確率で低酸素血症を判定できるとしている。すると、169匹の犬が低酸素血症になっていことが判明したという(母集団の4分の1以上)。また、低酸素血症のリスクを上げるファクターはBCS(5段階)が3以上であること、仰向けであること、100%の濃度の酸素を吸入していること、陽圧喚起をしなかったことであったとのことである。

上記のことから、抜管後の低酸素血症は頻繁におきていることが窺える。よって、リスクファクターを可能な限り回避し、過体重・肥満の犬の麻酔ではSpO2によるモニタリングを必須とすることをお薦めする。

過体重・肥満の犬における低酸素血症の発現リスクは、そうではない犬の約6倍だとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38750813/


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