猫の爪研ぎは本能とも言うべき自然な行動である。しかし、一般家庭で飼育されている状況を考慮すると、憂慮する事態が発生することがある。爪研ぎのターゲットとなった家具や壁はボロボロになってしまうのだ。そのため、爪研ぎをしても良い場所に導く、あるいは、爪研ぎをして欲しくない場所から遠ざける方法が常に求められているのである。一方、話は変わるが、猫は縄張りを主張する時、尿でマーキングする手段を取る。また、一度排泄をしたトイレに糞尿が残っている時、そのトイレを使わなくなる。つまり、排泄物に猫が嫌う何らかの物質が含まれている可能性があるのだ。
冒頭のような背景の中、アメリカおよび中国の大学らは、不妊・去勢手術を受けていない猫を対象にして彼らの糞尿に含まれる揮発性の成分を解析し、その成分を利用して爪研ぎを辞めさせる実験を行った。なお、同研究では、オスとメスに猫を分けて成分解析をしている。すると、メスに比べてオスの尿中に 3-メルカプト-3-メチルブタノール(MMB)7倍、糞便中にブタン酸が2倍弱多いことが判明したという。また、この2つの成分で匂い付けされた爪研ぎ用厚紙と猫の接触を減らし、爪研ぎの時間・頻度ともに低下することも分かったとのことだ(コントロールの厚紙にはミネラルオイルを塗布、行動観察は20分間)。
上記のことから、MMBとブタン酸は猫の爪研ぎ行動をコントロールできる可能性を秘めた成分と言える。よって、今後、両成分の臭気検査、両成分を塗れる家具や壁の素材、安全性について検証され、爪研ぎ防止グッズとして製品化されることを期待している。

爪研ぎ時間の低下は統計学的に有意であり、頻度の低下は傾向であるとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38338163/