ニュース

猫のエリスロポエチン遺伝子を持つウイルスベクターの効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

慢性腎臓病を患った猫では貧血がみられることがある。そのため、赤血球を増やす作用を有するエリスロポエチンを罹患猫に投与する治療が行われるのだ。しかし、このエリスロポエチン製剤は猫由来ではなく、ヒト由来なのである。つまり、アレルギー反応などの副作用や薬効の低下といったデメリットが付き物になってしまうのだ。結果、「猫には猫のエリスロポエチンを使用する」という発想に行き着くことになる。また、欲を言えば、ストレスを受けやすい猫に適した投薬方法を考案することが理想的なのである。

冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、猫のエリスロポエチンをコードする遺伝子を持つウイルスベクターの効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、猫の代わりにベクターを培養細胞に曝露し、ラットやマウスに投与している。すると、培養細胞では猫のエリスロポエチンが産生され、ラットやマウスのPCVが持続的に上昇することが確認されたという。また、培養細胞を抗ウイルス薬であるガンシクロビルに曝露すると、エリスロポエチンの産生が停止することも分かったとのことである。

上記のことから、猫のエリスロポエチンをコードする遺伝子を持つウイルスベクターは、貧血の治療に有用だと考えられる。加えて、万が一、赤血球が増加し過ぎた場合には、抗ウイルス薬の使用でそれを制御できるようである。よって、今後、慢性腎臓病を抱える猫に同ベクターを投与する研究が計画され、臨床応用の可能性が拡がっていくことを期待している。

本研究で用いたベクターには、多血症が起こった際に治療を終了するための遺伝的機構、いわゆる自殺遺伝子(単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ)が組み込まれているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38626794/


コメントする