高齢のヒトと同じように、高齢の犬は様々な病気を患う。そのため、彼らの健康を守り、管理することが大切なのだ。しかし、健康管理に対する見解は、オーナーと獣医師で異なる場合がある。言うなれば、経済的な現実を見るオーナーと理想を追う獣医師という構図だ。では実際のところ、両者の隔たりはどれ程のものなのだろうか。これを明らかにすることは、小動物臨床における円滑なコミュニケーションを図る上で大変に重要なことである。
冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学らは、犬の①オーナーと②獣医師にオンライン調査への協力を仰ぎ、高齢犬(7歳以上)の健康管理に対する見解を聴き取る研究を行った。すると、①は600名以上、②は300名以上のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆高齢犬の健康管理に対する①と②の見解◆
・①の大多数(47%)は年に一度動物病院に行くべきと考えていた
・②の大多数(73%)は半年に一度来院すべきと考えていた
・②の14%は高齢犬の健康診断を実施していた
・一方、高齢犬のオーナーの10%のみが健康診断に参加していた
・①の14%が病気になったら犬を動物病院に連れて行くと回答した
・同様のアドバイスをしている②は2%に留まった
・①の16%は動物病院との関係を持っていなかった
・①の28%は前年の犬のワクチン接種をしていなかった(③)
・③の33%は高齢犬にワクチン接種は必要ないと考えていた
・②の92%は高齢犬でもワクチン接種が必要と考えていた
・①が回答した高齢犬にみられる主な症状は下記の3つだった
1.散歩のスピードが落ちる(57%)
2.歯石(53%)
3.立ち上がる時の動きが不自然(50%)
・これらの症状を以前に経験したことのある①は動物病院へ行く必要性(緊急性)を感じにくくなっていた
上記のことから、高齢犬の健康管理に対する①と②の見解は大きく異なっていることが窺える。よって、今後、この相違を穴埋めするために、また高齢犬の健康を守るための両者の合意点を探るために、コミュニケーション術の開発やインフォームド・コンセントに含めるキーワードの特定を目的として研究が進むことを期待している。

②の25%は年に一度動物病院に来院するべきと考えていたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38638642/