犬の尿サンプルを用いた細菌培養では、感染・炎症に関与していない、いわゆる雑菌の検出を避けることが重要だとされている。そのため、院内で採尿する場合、包皮や外陰部を滅菌済みの生理食塩水で洗浄することが理想的だと考えられているのだ。そこで、疑問が浮かぶ。この洗浄には、どれ程に大きな臨床的意義が含まれているのだろうか。洗浄の有無で診断や治療方針が変わってしまう程の威力を発揮してしまうのだろうか。
冒頭のような背景の中、フロリダ大学は、単一の動物病院を訪れ、且つ、採尿し細菌培養も実施された犬100匹を対象にして、包皮や外陰部の洗浄の効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、犬をランダムに①洗浄無しグループと②洗浄有りグループの2つに分け、②に属する犬の包皮・外陰部のみを滅菌した生理食塩水で洗浄し、両群の尿サンプルを塗布した培地に形成されたコロニー(CFU/mL)を比較している。また、この数値が10000(10の4乗)を超えた場合に、臨床上重要な細菌の検出であるとしている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆包皮・外陰部の洗浄の有無と尿培養の結果◆
・両群の結果に有意差は無かった
・性別によっても有意差は無かった
・しかし陽性となった場合、細菌の増殖の程度はメスよりもオスで約5倍顕著であった
上記のことから、洗浄に大きな臨床的意義は無いことが窺える。よって、洗浄せずに実施した尿培養で想定とは異なる結果が出た場合において、包皮や外陰部の洗浄の上、再検査を行うことが望ましいと思われる。

本研究の結果を受け、大学はオス犬で尿サンプルの汚染、または、無症候性細菌尿が蔓延しているのではないかと述べています。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38622928/