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救急病棟に入院している猫に行った静脈留置に纏わるトラブルに関する研究

投稿者:武井 昭紘

獣医師は、輸液療法が必要な入院症例に屡々悩まされる。静脈に留置したカテーテルに纏わるトラブルが起きるからだ。輸液ポンプはエラー音を鳴らし続け、カテーテルが静脈から抜けて、皮下に輸液剤が漏出する。聞くだけで恐ろしい光景である。果たして、これらのトラブルの発生要因とは何であろうか。そして、その発生を防ぐ方法はあるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、コロラド州立大学は、大学付属動物病院を訪れて、且つ、救急病棟に24時間以上入院した猫を対象にして、静脈留置(末梢血管)に纏わるトラブルに関する情報を解析する研究を行った。なお、研究対象となった猫の静脈留置は、標準的な手技に慣れている人物が担当している。また、チェックされたトラブルには、①血管外に輸液剤が漏出すること、②静脈炎、③留置が抜けること、④留置が閉塞すること、⑤輸液ラインの破損、⑥猫が留置を取ることが含まれている。すると、120件のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆救急病棟に入院している猫に行った静脈留置に纏わるトラブル◆
・静脈留置の設置時間は中央値で約42時間(24.25~164.25時間)であった
・トラブルの発生率は約18%であった
・最も頻発したトラブルは①と③であった(それぞれ約6%)
・猫の体重が1kg増加することごとにトラブルの発生リスクが約1.5倍上がった
・留置針のが太いものを使用するとトラブルの発生リスクが大幅に減少した(22ゲージに比べて20ゲージでの発生リスクは0.13倍低い)

 

上記のことから、猫の体重と留置針の太さがトラブルの発生要因となっていることが分かる。よって、猫に静脈留置を施す場合は、針の太い静脈留置カテーテルを選択することをお薦めする。

細い留置針に慣れてしまうと、太い留置針を選びづらくなると思いますので、猫に限らず犬の診察でも日頃から太い留置針を選んでみましょう。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38599236/


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