腹部に外傷を負った場合、そのダメージが内臓へ達し破裂することがあり、仮に胆汁、尿、糞便が腹腔内に漏れると腹膜炎を起こすのだ。そして、この腹膜炎が重症となると、命の危機に瀕するのである。では実際のところ、前述した状況に落ちった犬猫の転帰はどうなっているのだろうか。死亡する可能性が高いのか。生存する可能性が残されているのか。実状を知り、日々の診療業務にあたることは非常に重要だと思われる。
冒頭のような背景の中、イギリスおよび香港の大学らは、過去17年間(200年~2022年)に外傷性、且つ、胆汁性の腹膜炎と診断された犬猫の診療記録を解析する研究を行った。すると、17件のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆外傷に伴って胆汁性の腹膜炎を起こした犬猫の転帰◆
・犬では発症から診断までに中央値で2日かかっていた
・猫では4日かかっていた
・約76%の症例でTBILが上昇していた
・約65%の症例で総胆管が破裂していた
・約12~13%の症例でそれぞれ胆嚢、胆嚢管、肝管が破裂していた
・犬では総胆管、猫では胆嚢管が破裂しやすかった
・犬には胆嚢十二指腸吻合術や総胆管修復術が最も多く適応されていた
・猫には胆嚢摘出術が最も多く摘出されていた
・胆嚢摘出術を受けた犬(1件)は術後20日目にして腹膜炎を再発した
・約88%の症例が無事に退院した
・生存が確認できた追跡期間は中央値で35日であった(14日~401日)
上記のことから、当該疾患の予後は良好と言える。一方で、約12%の症例は死亡していることが窺える。よって、今後、生存率を高める治療法(外科手術を中心に)について議論され、治療成績が向上することを期待している。

犬は13例、猫は4例で構成されていたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38569535/