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犬における空気嚥下症の発生状況を調べたアメリカの研究

投稿者:武井 昭紘

空気嚥下症は、ヒトの精神疾患と関連しているとも言われる消化器疾患で、空気を肺に吸い込むのではなく食道から胃へと飲み込み、膨満感を生じる病的現象として知られている。一方、小動物臨床における空気嚥下症の発生状況は不明で、臨床データに乏しいのが現状である。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、大学附属動物病院を訪れ、且つ、X線検査(造影剤を使用して透視検査を実施)を受けた犬120匹の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、空気嚥下症を「1回の飲食量の3分の1以上を空気が占める場合」または「胃の容積の3分の1以上を空気が占める場合」と定義している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬における空気嚥下症の発生状況◆
・発生率は40%であった
・呼吸器症状のみの犬(25%)よりも呼吸器と消化器症状を呈する犬(約58%)で発症確率が高かった
・短頭種、呼吸器症状を有する短頭種以外の品種、嚥下障害の重症度スコアが高い犬、吐き気がある犬でより一般的であった
・短頭種であること、呼吸器と消化器の症状を有すること、上気道の閉塞を起こしていることが空気嚥下症を予測するファクターであった

 

上記のことから、短頭種および呼吸器症状(特に上気道閉塞を疑う場合)を呈する犬で空気嚥下症が起きることが窺える。よって、X線検査で胃内に異常なガス貯留を認めた症例の鑑別リストには、上気道閉塞を追加して頂けると有り難い。また、短頭種のX線検査では呼吸器のみならず、胃の評価もして頂けると幸いである。

短頭種気道症候群の手術と空気嚥下症の関連性についても研究が進むと、新たな見解が得られるかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38561963/


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