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胸腰部の椎間板ヘルニアに対する外科手術を受けた犬における週末効果を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

週末効果。

それは、人医療において語られる治療成績の悪化に関する説である。具体的には、金曜日の夜から日曜日にかけて患者の死亡率が極端に高まる現象のことだ。しかし、この説を科学的・理論的に証明できる者は居ない。ある専門家によると、平日より土日の医療体制が脆弱(経験の少ない勤務医が当直・宿直をしている)であり、土日に来院する症例は緊急の場合が多いといった事情があるからとのことだが、明確な理由・原因は不明なのである。ここで、筆者には疑問が浮かんだ。土日に開院している動物病院が多い小動物臨床において、週末効果は生じるのだろうか。診察が混み合う土日の忙しい診療では一件一件への意識・集中力が低下すると考えると否定はできない。果たして、真偽の程は。

 

冒頭のような背景の中、イギリスのIVCグループは、急性の椎間板ヘルニア(胸腰部)を発症して、且つ、片側椎弓切除術を受けた犬を対象にして、週末効果の発生状況を調べる研究を行った。すると、460件の症例データが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆小動物臨床における週末効果◆
・約87%の症例が平日に手術を受けた(①)
・約13%の症例が週末に手術を受けた(②)
・①に比べて②では歩行不能な犬の割合が高い傾向にあった
・しかし有意差はなかった
・深部痛覚を失った犬の割合も有意差はなかった
・①に比べて②では歩行能力が回復しないリスクが約3倍高かった
・①に比べて②では術後に死亡するリスクが約2倍高かった

 

上記のことから、小動物臨床においても週末効果は発生すると言える。つまり、平日よりも週末の方が死亡リスクが高く、術後経過が悪くなっているのだ。これは何が起因となっているのだろうか。今後、原因を追究する研究が進み、犬の椎間板ヘルニアの治療成績が更に向上することを願っている。

経過の追跡は少なくとも28日間は続けられたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38556784/


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