人医療において、皮膚に発生する扁平上皮癌および光線角化症(紫外線があたる皮膚に癌の前段階の病変ができること)の進行にブドウ球菌属が関与していると言われている。一方、犬猫の皮膚に発生する扁平上皮癌とブドウ球菌属の関連性を検証した研究は乏しいのが現状である。これは、犬猫の扁平上皮癌が進行してから診断される傾向がある小動物臨床において、大きな問題だと思われる。果たして、両者は関連しているのだろうか。
冒頭のような背景の中、オーストラリアの大学および動物病院らは、犬猫の皮膚に発生した①扁平上皮癌と、②その病変周囲の皮膚を対象にして、微生物叢を調べる研究を行った。すると、①は12件、②は25件のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬猫の皮膚に発生した扁平上皮癌とブドウ球菌との関連性◆
・微生物叢の多様性が大幅に減少していた
・①の50%、②の16%でブドウ球菌属は微生物叢の50%を超える割合を占めていた
・犬では黄色ブドウ球菌が多く確認された
・猫ではStaphylococcus felisが多く確認された
上記のことから、ブドウ球菌属は犬猫の皮膚における扁平上皮癌の発生に関与している可能性があると考えられる。よって、今後、同菌の割合を減少させることで扁平上皮癌の発生を抑えられるかについて検証され、予防医学が発展することを期待している。

黄色ブドウ球菌が産生する毒素がDNAを損傷し、腫瘍の発生に関与するとされております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38530017/