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普段の飼育環境で実施する猫の体温測定に適した体の部位に関する研究

投稿者:武井 昭紘

ペットの体温測定、特に直腸温(rectal temperature、RT)の測定は楽ではない。なぜならば、嫌がる個体、常に動く個体が居るからだ。そして、この問題は、動物病院は勿論のこと、一般家庭での体温測定で更に顕在化するのだ。そのため、近年では耳、歯肉、眼、腋窩の温度を測定する機器が登場している。しかし、課題は残されている。古くから利用されてきたRTには、それに付随する多くの研究・臨床データが存在する。一方、耳、歯肉、眼、腋窩などの温度は世界的に統一されてる訳ではなく、またデータに乏しい。つまり、これらの測定温度の中で、RTの数値に限りなく近いものを特定することが重視とされているのだ。では実際のところ、どこで測定することが理想的なのだろうか。

 

冒頭のような背景の中で、トルコの大学は、獣医師が飼育する、臨床上健康な猫5匹を対象にして、彼らのRTと耳介、角膜、内眼角、歯肉、中手骨の皮膚、腋窩の温度を比較する研究を行った。なお、同研究では、普段飼育されている環境下に限定して、RTと腋窩温度はデジタル表示機能を持つ体温計で、その他の温度は赤外線カメラで測定している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆普段の飼育環境で実施する猫の体温測定に適した体の部位◆
・RTと最も近しい数値となるのは腋窩温度だった
・RTと腋窩温度の差の平均は0.26℃(最大で1.13℃)であった
・RTの測定に要する時間は平均17.34±0.89秒であった
・腋窩温度の測定に要する時間は平均46.72±1.16秒であった

 

上記のことから、RTに替わり得るものは腋窩温度であることが窺える。よって、今後、腋窩温度の測定のデメリットと言えるであろう所要時間の長さを解決する方法が考案され、動物病院でのRTの測定に近い、且つ、一般家庭で実践できる体温測定が実現することを期待している。

研究に参加した猫の品種は雑種だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38520702/


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