外傷に起因した犬の眼球突出は、直ちに飛び出た眼球を眼窩に収める必要があるため、眼科診療における救急疾患に位置付けられている。しかし、外傷を負ったという事実を考慮すると、眼球だけに注意を向ける訳にいかない。なぜならば、全身の何処かに別の外傷を負っているかも知れないからである。果たして、眼球突出を起こした犬のうち、全身性の外傷を抱える個体はどれ程の割合なのか。また、その外傷によって生命の危機に瀕することはあるのだろうか。
冒頭のような背景の中、アイオワ州立大学および動物病院らは、とある一次診療施設と高次診療施設を訪れた、外傷性眼球突出の犬100匹を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆外傷性眼球突出の犬の転帰◆
・17%の症例が全身性の外傷を負っていた
・①全身性の外傷が無い症例(中央値38.6℃)に比べて、②有る症例(38.3℃)の体温は有意に低かった
・①(112mg/dL)に比べて②(125mg/dL)の血糖値は有意に高かった
・①(46%)に比べて②(40%)のPCVは低い傾向にあった
・無事に退院する可能性については①と②で差異はなかった
上記のことから、身体検査や血液検査によって全身性の外傷の有無を疑うことができると考えられる。よって、外傷が目立たない症例において、該当する検査所見が認められた場合は、頭部のみならず胸部・腹部・四肢の画像診断をすることをお薦めする。

診療記録は2017年~2022年のものだとのことです。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1271189/full