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難治性のてんかんを一時的にイソフルランの吸入で管理した犬に関する研究

投稿者:武井 昭紘

ジアゼパム、ミダゾラム、プロポフォール、アルファキサロン。これらの麻酔薬は、てんかん発作を一時的に止めたり、コントロールするために使用される場合がある。そこで、疑問が浮かぶ。麻酔薬には吸入麻酔薬なるものがある。この吸入麻酔薬は、他の麻酔薬と同様に、てんかん発作に有効なのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ギリシャの大学は、過去10年(2013年2月〜2023年3月)の間で難治性てんかんの治療のために同大学附属動物病院のICUに入院し、且つ、イソフルランの吸入で発作の制御を試みられた犬の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、イソフルラン吸入中に発作が治って無事に退院した症例を治療反応群(レスポンダー)、吸入中に発作が止まるも吸入中止後に発作が再発した症例を再発群(ノンレスポンダー)に分類している。すると、20例、発作および吸入治療の回数として26回分のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったたいう。

◆犬の難治性てんかんに対するイソフルランの効果◆
・イソフルランの濃度は0.5~4.0%であった
・吸入時間の中央値は12.67時間(4~62時間) であった
・入院期間の中央値は48時間(24~120時間) であった
・全ての症例でイソフルラン吸入中に発作が止まった
・約73%(19件)がレスポンダーであった
・約27%(7件)がノンレスポンダーであった
・ノンレスポンダーに属する症例は心停止による死亡または安楽死となった

 

上記のことから、イソフルランの吸入で発作が止められると言える。一方で、約3分の1の症例はイソフルランのみでのコントロールが難しいことが窺える。よって、今後、イソフルランの吸入で発作が止まり、且つ、退院できる症例を判別する方法と、ノンレスポンダーに対する新たな治療法の開発が進むことを期待している。

約89%(23件)でイソフルランの吸入による副作用が確認されたとのことですので、この副作用を抑える方法の考案も必要だと思います。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38523714/


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