抗生剤が効かない耐性菌の出現は、ヒトや動物の命に関わる世界的な社会問題である。そのため、医療および動物医療の現場では適切な抗生剤の使用が求められており、乱用を防ぐことが命題となっているのだ。そして、それを実現するべく、細菌培養と薬剤感受性試験が行われているのである。しかし、この行程にはデメリットが存在する。時間を要してしまうのだ。通常、培養した細菌に効く抗生剤を特定するのに48〜72時間は掛かってしまうのである。だが、細菌感染症は結果が出るまでの期間、大人しく待っているという保証は全くない。その間、医師・獣医師は、経験的に効果があると分かっている抗生剤を選択するしかないのである。
冒頭のような背景の中、エディンバラ大学は、犬から採取した①尿および②皮膚サンプルを用いて、培養が必要無く、且つ、5時間以内に細菌を同定できるメタゲノムナノポア シーケンシングという遺伝子解析の精度を検証する研究を行った。すると、①に限ると最大95%の精度で薬剤感受性を予測できることが判明したという。一方で、残念ながら、皮膚に常在する細菌叢によって②から得られる結果の解釈は困難であったとのことだ。
よって、今後、細菌性の尿路感染症を迅速に診断するツールとしてメタゲノムナノポア シーケンシングが商業化され、一般的な動物病院の診療時間内において即日で判定される薬剤感受性試験が普及することを期待している。

本研究で採用された解析では、培養が困難な細菌種の薬剤感受性も突き止められる可能性があるとのことです。
参考ページ:
https://www.microbiologyresearch.org/content/journal/mgen/10.1099/mgen.0.001066