病理組織学的検査において、慢性腎臓病(chronic kidney disease、CKD)を抱える猫の腎臓には石灰沈着が起きているという。しかし、この石灰沈着の臨床的意義は不明とされている。例え、超音波検査で生前に同現象が確認できたとしても、それが何を意味しているのか分からないのだ。
冒頭のような背景の中、欧州の獣医科大学らはCKDの猫36匹を対象にして、彼らの血液検査および超音波検査のデータを解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆腎臓の石灰沈着と猫の慢性腎臓病の関連性◆
・症例の60%以上で腎臓の石灰沈着を認めた
・高Ca血症の猫に限ると有病率は80%以上に達した
・Caが0.1 mg/dL上昇する度に石灰沈着のリスクが1.27倍に増加した
・Pが0.1 mg/dL上昇する度に石灰沈着のリスクが1.16倍に増加した
・CREが0.1 mg/dL上昇する度に石灰沈着のリスクが1.29倍に増加した
・ALTが10 U/L上昇する度に石灰沈着のリスクが2.08倍に増加した
・腎臓に石灰沈着を認める症例では0.03±0.01 mg/dL/月のペースでCREが上昇した
・腎臓に石灰沈着を認める症例では0.06±0.02 mg/dL/月のペースでPが上昇した
・腎臓に石灰沈着を認める症例では0.02±0.01 kg/月のペースで体重が減少した
上記のことから、腎臓の石灰沈着はCKDの悪化と関連していることが窺える。よって、今後、この石灰沈着を防ぐ方法が考案され、猫のCKDに対する新たな治療法が確立されることを期待している。

本研究の対象となった症例の甲状腺機能は正常だとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38438128/