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急性の消化器トラブルを起こした犬の血清中コバラミン濃度を測定した研究

投稿者:武井 昭紘

一説によると、消化器のトラブルを抱えるヒトや動物ではコバラミンの不足が起きている場合があるという。そこで、疑問が浮かぶ。実際のところ、その不足がどれほどの割合で発生し、どれほどに病態を悪化させ、彼らの経過にどのような影響を及ぼすのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イギリスの大学および動物病院らは、過去2年間(2019年9月~2021年9月)に急性の消化器トラブルを起こし、且つ、血清中コバラミン濃度を測定された犬33匹の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、コバラミンの濃度が200~295pmol/Lであった場合を正常低値、<200pmol/Lであった場合を異常低値と定義している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆急性の消化器トラブルを起こした犬の血清中コバラミン濃度◆
・17匹が原因不明のままであった
・7匹はパルボウイルス感染症であった
・3匹は急性出血性下痢症候群であった
・残りの6匹はその他に分類した
・約30%の症例に異常低値が認められた
・約18%の症例は正常低値であった
・死亡率は3%であった
・コバラミンの濃度は臨床症状がある期間(診断前)、入院期間、重症度との関連性を示さなかった

 

上記のことから、血清中のコバラミン濃度が低下する現象は、消化器トラブルを抱えた犬に比較的良く見られる所見だと考えられる。しかし、本研究では、その低下が意味するところを解明できなかった。よって、今後、血清中コバラミン濃度の低下の臨床的意義を明らかにする研究が進み、新たな治療法・予防法が確立されることを期待している。

各症例の重症度はAPPLEスコアで評価されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38183171/


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