消化器症状は、犬猫に適応する化学療法における一般的な副作用である。そのため、低下していく食欲をコントロールすることは重要とされているのだ。一方、話は変わるが、食欲不振の猫にミルタザピンという増進剤が投与されることがある。そこで、疑問が浮かぶ。このミルタザピンは、化学療法に伴う消化器症状を軽減する効果を有しているのだろうか。
冒頭のような背景の中、国立台湾大学は、悪性の乳腺腫瘍と診断され、且つ、ドキソルビシンによる化学療法に臨む猫11匹を対象にして、ミルタザピンの効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、ミルタザピンの用量を1.88mg/headに設定し、化学療法の開始時点から2週間に渡って48時間ごとに投与している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆乳腺腫瘍に対する化学療法を受けている猫におけるミルタザピンの効果◆
・①プラセボ群に比べて②ミルタザピン投与群の体重が有意に増加した
・①に比べて②の食欲と活動性は有意に高かった
・①に比べて②が呈する嘔吐の頻度は有意に低かった
上記のことから、ミルタザピンは化学療法を受けている猫の消化器症状を軽減し、食欲低下を防止して、体重を増加させることが窺える。よって、化学療法の副作用として食欲が低下している猫の診察を担当する獣医師は、ミルタザピンの使用を検討することをお薦めする。

本研究における①と②は休薬期間を設けてクロスオーバーしております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38395251/