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マラセチアまたは細菌性外耳炎の犬が抱える炎症をサイトカインの発現で類推した研究

投稿者:武井 昭紘

外耳炎は文字通り、感覚器の一部である外耳の炎症で、その炎症の有無は新人獣医師であっても経験を積めば身体検査所見を基に判定できるものである。しかし、炎症の程度となると、判定は容易ではなくなる。また、目の前の症例において、外耳炎の主な病原体がマラセチアなのか細菌なのかを鑑別することも簡単ではないのだ。つまり、当該疾患の炎症の程度を類推し(可能であれば非侵襲的に)、両病原体を鑑別する手法が求められているのである。

 

冒頭のような背景の中、韓国の全北大学校は、①臨床上健康な犬、②マラセチア性外耳炎の犬、③細菌性外耳炎の犬を対象にして、彼らの耳垢に含まれるサイトカインを分析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬の耳垢に含まれるサイトカイン◆
・①に比べて②③ではIL-8/CXCL8濃度が有意に高かった
・この濃度は②③の重症度スコアと正の相関関係にあった
・①②に比べて③のIL-6とIL-1βの発現レベルが上昇していた
・炎症細胞の状態を数値にしたスコアとIL-6とIL-1βのレベルは弱い正の相関関係にあった

 

上記のことから、犬の耳垢に含まれるサイトカインは外耳炎の重症度を判定し、マラセチア性と細菌性を鑑別できる診断マーカーになり得ることが窺える。よって、今後、大規模な臨床研究が進み、その有用性が検証されていくこと、そして、これらのマーカーが治療効果判定にも応用されることを期待している。

①は24例、②は25例、③は15例で構成されていたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2024.1355569/full


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