前十字靭帯断裂(Cranial cruciate ligament rupture、CCLR)は、一般的に①外科手術で治療される。しかし、経済的負担や麻酔リスクを許容できない場合、②内科的に管理されることもあるのだ。そこで、疑問が浮かぶ。①と②では、どちらがベターな選択となるのだろうか。やはり、大学の講義に使用される外科学の成書にも記載がある程なのだから、①が優れているのだろうか。
冒頭のような背景の中、タイの獣医科大学らは、体重が10kg未満の小型犬を対象にして、CCLRに対する①または②に伴った転帰を調べる研究を行った。なお、同研究では、①②ともに9件の症例が抽出されている。また、両群は同じリハビリテーションを受けている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆CCLRに対する①と②の比較◆
・①の6例、②の5例で膝蓋骨の内方脱臼が生じた
・両群の整形外科的評価スコア、疼痛スコア、大腿周囲径に有意差は無かった
・両群の整形外科的評価スコアと疼痛スコアは治療によって有意に減少した
・①に属する症例の大腿周囲径は有意に増加した
・一方で②に属する症例の大腿周囲径の数値は比較的安定していた(増加しなかった)
・治療から84日までの短期的な転帰は両群とも良好で有意差は無かった
上記のことから、①と②は甲乙付け難いと言える。ただし、大腿周囲径の増加を考慮すると、①が優れているとも捉えることができる。果たして、この大腿周囲径の増加はCCLRからの回復に必須の条件なのだろうか。今後、その臨床的意義を明らかにする研究が進み、①②の選択について議論が深まることを期待したい。

CCLRに対する術式はTPLOだったとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38417876/