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跛行を伴った股異形成を抱える犬に対する全身振動刺激の効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

整形外科疾患などで痛みを感じている四肢は、負重ができなくなったり、十分に動かせなくなり、最終的には筋肉は萎縮していく。そのため、この痛みを軽減し、筋肉の萎縮を喰い止める措置が重要とされているのだ。では実際のところ、如何にして「それら」を実現するのか。様々な観点から研究を重ね、より良い治療法を模索することが獣医学の課題である。

 

冒頭のような背景の中、ブラジルとイギリスの大学らは様々な年齢・体重の犬10匹を対象にして、全身を振動させながら実施するトレーニング(15分間のセッションを週に3回、16週間継続)の効果を検証する研究を行った。なお、研究に参加した犬たちは、股異形成が疑われる症例から重度の股異形成と診断された症例まで多岐に渡っている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆股異形成を抱える犬に対する全身振動刺激の効果◆
・大腿周囲径が有意に増加した
・その変化は8週目以降で大きかった
・左臀部と両後肢の筋肉の断面(超音波検査による)が有意に増加した
・12週目と16週目の愛犬の様子から痛みが軽減しているという印象をオーナーらは受けていた
・外側広筋の筋電位図ではトレーニング終了後に65%の症例で改善が見られた
・破行スコアと四肢の動きの解析には変化が認められなかった

 

上記のことから、本研究に採用されたトレーニングプログラムには犬の後肢の筋肉を増加させる効果があると考えられる。しかし一方で、破行の程度と足の動きには改善がないことも分かる。よって、今後、内科療法または外科手術とトレーニングを組み合わせた治療の効果も検証され、股異形成の治療成績が改善することを期待している。

研究に参加した犬の年齢には1.5歳〜9歳、体重には14.5kg〜53.0kgの幅があったとのこです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38003074/


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